House in Hamadayama

閑静な住宅街の旗竿敷地に経つ住宅である。100坪というゆとりある敷地をどのように活かすかが設計のポイントであった。クライアントはジュエリーデザイナーであり、ご夫婦ともに海外生活もあったためアートやデザインに対する理解があり、住空間においても素材感や色彩感覚など質における豊かさを期待しておられた。また、旅行先のモロッコの建築に魅了され、その雰囲気を取り入れることも希望されていた。

そのことから「リヤド」のように中庭を囲んで部屋を配置する計画にしようと考えた。単純に中心を囲むコートハウスでは無く、庭を敷地のさまざまな場所に点在させ各部屋が外部の空間にアクセス出来るようになっている。庭にも建築と同等の壁を建てて囲い、周辺から遮断することで屋外も室内も同等価な質の高いプライベート空間を確保している。それにより、どこにいても太陽の光や、風の心地よさを感じながら生活できる気持ちの良い住宅となった。庭の植栽は、自然とのつながりを感じさせてくれ、リフレッシュやリラックスの効果を最大限にもたらしている。特にシンボルとなるオリーブからはパワーや安らぎを与えていて暮らしの拠り所となっている。

1階はキッチンを中心としたパブリックスペース、2階は個室とわかりやすい構成でありながら、全ての部屋が点在した庭やテラスと連続しており、内外を平面だけでなく立体的にも回遊できるようになっている。迷路のような動線、路地のような廊下を抜けると広場のような庭があり「リヤド」のような楽しい空間を作ることができたのではないかと思う。

素材は漆喰、タイル、木と経年変化を楽しめる素材を採用し、手持ちの家具やクライアントが製作した真鍮の金物などもアクセントとして空間に取り入れている。建築はシンプルさ、モダンを残しつつ、仕上げやディテールで有機的な要素をプラスするバランスの良い空間は住まい手が作り上げていく余白を残しており、暮らす楽しみ、変化していく楽しみをもたらしている。洗練されつつ、質感により豊かな表情をもつこの住まいはクライアントが長年かけて収集したアンティークの雑貨やアートを引き立てていて、これ以上無いほどに住まい手のセンスを引き立ている。

住宅に求められることとは、楽しく幸せに長く時を重ねていくことだと考えると、この住まいではその全てが実現できたのではないかと感じている。それはひとえにクライアントとの良いコラボレーション、それを導いてくれた幸せなご縁のおかげだと感謝している。
所在地 東京都
建築用途 専用住宅
家族構成 夫婦+子供2人+犬
敷地面積 349.48m2
延床面積 210.57m2
階数 地上2階
主要構造 木造
竣工 2024.08
構造設計 正木構造研究所
造園 直井造園土木
施工 大作
Photo Hiroshi Ueda
Movie Seiya Aoki