Kawada-chou Apartment

新宿の小笠原伯爵邸の緑を借景に持つRC4階建の集合住宅。伯爵邸に敬意を表してか、周辺も落ち着いた雰囲気の建物が多い。そんな街並みを考慮して、普段からも同じように考えてはいるが、特に奇を衒う事はせず、この場が持つ雰囲気を壊さぬよう、自然に見える佇まいと調和を重視した色遣い、素材選びが最も重要であると考えた。一番の特徴となるファサードについては、煉瓦とコンクリート打放しの組み合わせで、大きくスケールを整え、集合住宅特有の細切れで雑多なスケール感、生活感に通常よりも目がいかないようなデザインとした。また、素材においても伯爵邸と同様に、手仕事感、不揃い感、味や趣を感じられるようなものにしたいと考え、オリジナルの調色で焼いたレンガを採用し、その結果、重みや荒々しさ、素朴さもありながら、優しさや上品さも感じられる印象とすることができたように思う。内部空間は借景となる庭園の緑を切り取るように開口を設け、インテリアデザインも白とナチュラルなフローリングとし、風景を際立たせるようシンプルにとどめている。出来上がってみて、新築でありながらも昔からそこにあった様に街並みに馴染んでいる様子に、ここでの目標をひとまず達成できたのではないかと、安心している。この場に限らず、新築を考える際、誰もが周囲や歴史との繋がりにもっと注意深くなっていれば今の街並みや風景はもう少し、魅力的になれたはずなのでは？と考えさせる。